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『東京スカパラダイスオーケストラ 国宝松江城5周年記念スペシャルライブレポート』

2020.12.01

耳の奥にいまでも残っている音の余韻だけであの素晴らしい時間を思い出す事が出来る。この言葉が正解か分からないが、会場に居た人、配信で見ていた人、外で音を聴いていた人、みんながきっと「物凄く温かくて、分厚くて、ピュアでときめく様な感情を持って帰る」そんな東京スカパラダイスオーケストラのスペシャルライブであった。

山陰のラジオステーション、エフエム山陰開局35周年記念・地元テレビ局TSK開局50周年事業、そして国宝松江城5周年を記念した、「東京スカパラダイスオーケストラ in 松江城」の公演。スペシャルゲストにさかなクン、そしてライブ直前に発表された宮本浩次(みやもとひろじ)であった。秋の澄み渡る青空と紅葉、国宝松江城の入口である馬溜跡に設営された特設ステージ、歴史の重みを感じさせる石垣、中央に鎮座する東京スカパラダイスオーケストラの旗、もう直ぐここで特別な時間(マジックアワー)が始まる期待感で胸がいっぱいであった。「あの場所に居れた事がどれだけ幸運であったか」と改めて思う。

この公演は島根・鳥取(山陰両県)居住者限定でチケットの販売が行われた。スカパラの人気はもちろんの事、会場への入場者数も限られておりチケットの入手はそれはとてもとても困難であった。なにより新型コロナウイルスという未曾有の状況下の中で、世界中で現在進行形で人が集まる事が困難な状況の中で公演が開催されたのは運営サイドの徹底した新型コロナウイルス対策、山陰という土地柄、なにより運営サイドの強い意志だと感じた。2020年11月14日(土)は清々しいぐらいの青空であった。ステージからは国宝松江城の天守閣を望むことが出来る。会場OPENから間も無くしてラジオパーソナリティーから東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)、さかなクンのライブ直前の生声が会場中に届けられた。否応にも期待が高まる。

そして会場OPENからほどなく開演時間の13:30となった。”リボン”の曲と共にワインレッドのスーツを身にまとったメンバーがステージに登場した。会場の空気が一気にかわり同時に大きな拍手とスタンディングオベーションで迎えられた。ここからドラマチックな音楽が2時間にわたって行われた。「ペドラーズ」「5days of TEQUILA」とスカパラのライブ代表曲が披露され、鳥取県出身の加藤氏が演奏ステージ中央に設けられたセンター台に乗り心地よいギターをかき鳴らす。この2曲で観客の心を鷲掴みにされ熱気をおびてくる。つづけてファンファーレを感じさせる「Come On!」でスウィングタイムとなった。そして会場のボルテージそのままに11分間の息をのむ間もないぐらいの圧倒的な怒涛のメドレーがはじまった。「STROKE OF FATE」から始まり「めくれたオレンジ」でフィニッシュ。城が舞台となればドハマリなナンバー。「Samurai Dreamers <サビレルナ和ヨ>」が演奏された。和とダンディズム、哀愁を感じる曲に男性はもちろん子供も女性も一体となって盛り上がる。

そしてスペシャルゲストのさかなクンがステージ横で「Samurai Dreamers」の演奏を眺めていた。ステージ直前のさかなクンは凛々しい顔で大きなバスサックスを持ちながら静かに舞台を待っている様子であった。カメラに気が付くと一度だけ笑み浮かべ、また凛々しい表情へ戻った。そしてステージに呼ばれると風の様に駆け抜けていった。CMでもお馴染みの「Paradise Has No Border」でバスサックスの太い音のソロを披露、次にはメローナンバーの「銀河と迷路」で茂木氏(Dr)の歌声に合わせる。そして誰もが知っている「およげ!たいやきくん」がスカパラバージョンで演奏されなんともチャーミングなSETである。会場にはさかなクンのファンの方がさかなの被り物を着て参戦されている方もいらっしゃった。MCでは日本百景の湖、松江の宍道湖に触れていた。持参した可愛らしいイラストで宍道湖に住む魚を説明するさかなクン。すごい。ボーダレスな魅力を持つさかなクンに会場中は虜になったに違いない。

熱を帯びた会場そのままにインスト曲で「SKA ME CRAZY」「Great Conjunction2020」を披露。キーボード沖氏のソロの音の美しさに心を奪われ、ベースの川上氏の音が兎に角ずっとずっと気持ち良く響き、大森氏の軽快かつ正確無比なパーカッションがかさなっていく。そんな中で私が印象的だったのは「風のプロフィール」であった。紅葉が色づく松江城の景色に優しく消えていく心地よいメロディと茂木氏の温かい歌声。なにより胸を掴むような歌詞。こんな時間がずっと続けばとファインダーの中を見つめながら思ってしまった。

そしてスペシャルゲストの宮本浩次が登場した。登場から存在感が物凄かった。握り拳と鋭い眼差し髪をかきあげ情熱を叩きつける唯一無二のパフォーマンス。天に向かって指を差し、地面を凝視して、高らかに歌い上げる。感情の内側から火を付ける様なシャウトがスカパラの演奏と交わり、目の前の景色が変わっていくのである。遠く離れた場所から撮影をしたが眼光がこちらまで届く圧力であった。披露された曲は2曲「明日以外すべて燃やせ」「俺たちの明日」であった。体感した事のない温度である。命と魂の燈火がステージを通り過ぎるような儚い一瞬の出来事であった。

そして最後の曲「Glorious」が演奏されたのである。谷中氏のMCで「新型コロナウィルスの状況下で本当に頑張っているのは静かに努力している人である」というメッセージを残してくれていた。この曲を最後にしたのは、そんなメッセージを込めたのではと思う。

運営の中心となっていたFM山陰の石橋氏に感謝のメッセージが届けられ「今日という日をずっと忘れない」という言葉も一緒に添えられていた。広い松江城に響き渡る大きな拍手と共に終わりへと近づいていった。アンコールは「DOWN BEAT STOMP」、さかなクン、宮本氏もステージにあがりクロージングされた。

観客やファン、音楽ファンはいまだに先が見えない中でずっとずっとスカパラの音楽をこの日を待っていたに違いない。その想いを何百倍にして幸せを届けてくれた圧巻のスペシャルライブであった。そして最後の最後、ライブ直後の集合写真を1枚撮影させて頂いた。石垣をバックに並ぶスカパラのメンバー・さかなクン・宮本浩次。画面からあふれんばかりの最高の笑顔を撮らせて頂いた。この写真を何度も見返させて頂き感じた。「ファンも勿論だがきっと音楽家がこの舞台をずっと待ち望んでいた」のではと。

「缶ビール先にあけちゃったよ。お疲れ、乾杯!!皆ありがとう」一番奥の楽屋から笑い声が響いてきた。スカパラが松江城に残してくれた「最高の音楽」と「今日という日をずっと忘れない」という言葉はとてもかけがえのない「何か」を松江に残してくれた。


国宝松江城5周年記念 東京スカパラダイスオーケストラin 松江城

日時:11月14日(土)開場12:00 / 開演13:30
会場:国宝松江城 馬溜特設ステージ
Guest:さかなクン、宮本浩次
主催:松江城天守国宝指定5周年情報発信事業実行委員会
キャンディープロモーション
エフエム山陰

“東京スカパラダイスオーケストラ ワンマンライブ「Great Conjunction 2020」at ZEPP HANEDA”
12月3日(木)Zepp Haneda(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00
[チケット]
¥7,100 / 配信チケット ¥3,300

[問]
HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(平日12:00~15:00)

Text&Photograph:Atsushi Harada
Photograph:Oiwake Sayo(SMA)
Cooperation:Bar Isaya ISAKU,Boss Kikkawa,Ryosuke Sato

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