LIVE LOVERS

西寺郷太×土岐麻子 対談 vol.2 クラシックバレエからK-POP、V6までどっぷり語り合う

2022.01.14

西寺郷太:ゲストをお招きし、ゲストと最高の音楽体験を共に語るプログラム、『西寺郷太の最高!ファンクラブ』です。渋谷MIYASHITA PARK目の前の某所からお送りしております。今回お招きしたゲストは、前回に引き続き土岐麻子さんです。どうもー。

土岐:はーい。どうもよろしくお願いします!

西寺:秋の終わりに沖縄に行かれてませんでした? インスタグラム見てますけど。

土岐:そうなんですよ。夫が沖縄出身なので帰省がてら旅行もしたりとかして。年に一回帰れるか帰れないかくらいのペースですけど。

西寺:東京育ちの土岐さんにとっては新鮮じゃない? みんな正月に「田舎」に帰省するとかあるけど、別の拠点があるというのは。

土岐:そうですね、本当に。確か郷太さんもお母さんが沖縄の人でしたっけ?

西寺:うちのおかんは東京の新宿育ちなんだけど、母方の祖父は宮古島の出身で、祖母は徳之島の人で。戦後すぐ東京に移ってうちのおかんが生まれたという。徳之島は奄美だから鹿児島だよね。闘牛が盛んで行ってみたいんだけど、まだ一回もなくて。だから血的には半分宮古島と徳之島ですね、いわゆる琉球王国。僕は。

土岐:宮古島に行ったことはあります?

西寺:宮古島は2回かな? 中学生くらいのときに一度家族で行って、10年くらい前も親戚が向こうにいるので行ったねー。

土岐:いいですねえ。本島以外の島はまだ行ったことなくて。

西寺:宮古島はとにかく集まって酒を飲む(笑)。なんていうか忘れちゃったけど、一杯グラスに注いで次の人に回してっていうのをグルグルグルグル。

土岐:聞いたことあります。円陣組んで、誰かが倒れるまで(笑)。

西寺:そうそうそう(笑)。で、体に悪いし、その風習をやめようっていう法案が議会で通った後に、成立したお祝いでそれを結局すぐやったらしくて、現地の人も笑ってた。

土岐:はっはっは!

西寺:なんていうか忘れちゃったけど、「宮古島 お酒 風習」とかで調べたら出てくるかもしれない(笑)。

土岐:いま調べちゃおう……オトーリ!(笑)

西寺:そう、オトーリだ!(笑) 5人とかいたら、空っぽになるまでずーっと回して、また注いで。

土岐:本当、南の人たちってお酒強いですよね。

西寺:あとはやっぱり踊るやん。10年前に行った時、居酒屋にもステージがあって三味線で演奏始まるんだけど、演者や店員さんだけでなく、お客さんも全員ナチュラルに踊り出してビックリした。そういうお祭り好きの血は自分も入ってるなと(笑)。

土岐:そうですよね、確実に(笑)。

西寺:俺の場合どっちかというと親父の方の、お寺の話ばっかフィーチャーしてしまうんだけど、おかんサイド側はそっちなんですよ。どうですか、沖縄は?

土岐:沖縄の人たちの明るさを帰るたびに感じます。ただ、うちの夫の家族はそんな中でも絶対に踊らないタイプの人たちなんですよ(笑)。もしかしたらそうやってお酒を深く飲んだら踊るのかもしれないけど(笑)、すごいシャイな人たちで。

西寺:少し前、旦那さんも含めて一緒にご飯食べたけど、たしかにそんなに俺が俺がみたいな感じじゃなかったですよね、土岐さんの旦那さん。

土岐:そう。歌声も聴いたことないし、ふざけてでも踊ったとこなんて見たことない。わたしは家で一人で歌ったり踊ったりしてますけど、K-POP聴きながら。すごい冷めた目で見られるんですよ(笑)。

西寺:(笑)。一個土岐さんに聞きたいのは、僕、わりと最近まで土岐さんが幼い頃から本気でクラシックバレエやってたっていうのを知らなかったんですけど、あれってバリバリダンスじゃないですか。体幹とか。

土岐:そうですね。

西寺:だから、新作の『Twilight』も含めて、ここ最近ハマってるK-POPもダンスが基本にあってっていう中で、ビデオでめっちゃ踊るとかはないの? 姿勢もピンとしてカッコ良さそうだけど。

土岐:あー、ビデオでめっちゃ踊るはいつかやってみたかったんですけど、もう動かないですね、身体が(笑)。

西寺:そう?(笑)

土岐:多分無理ですね、特訓しないと。もうライザップみたいなところ行かないと、筋力が。ですけど、身体が動くような音楽っていうのは元々好きだったので。スティービー・ワンダーだとか、アース・ウィンド&ファイアが好きだったりとか、そういうダンスサウンドとかディスコっぽいものも当然好きで。だから、郷太さんがノーナを大学のときに結成されて、隣のサークルだけど足繁くライブに――。

西寺:来てくれたね、本当に。最初の純粋なファンのひとりだった。

土岐:そう。本当に踊れるサウンドだから、ノーナって。それですごく好きだったのはあります。

西寺:俺バレエをストイックにやってた土岐さんっていうのが新鮮で。大変だった? 何才くらいからやってたんですか。

土岐:えっとね、2才半からなんですよ。

西寺:ええ!?

土岐:2才半のときに、何かテレビで観たのかわからないですけど、小さいときってお姫様に憧れたりするじゃないですか。それで、どうやらバレエだとピンク色のチュチュって言われるドレスで踊って、ステージに上がれるらしいっていう情報をゲットしまして。

西寺:2才半で?

土岐:2才半で(笑)。よく覚えてるんですけど、代々木上原の丸正っていうスーパーの辺りをお母さんと歩いてるときに「バレエやりたい」って打ち明けたんですよ。そしたら道の途中で立ち止まって、「それ、本気で言ってんの?」みたいなことを言われて。「バレエって華やかに見えるけどものすごく練習も大変だと思うし、毎日ああいう可愛い衣装を着て練習するわけじゃないんだよ」みたいなことを、多分わたしが相当しつこかったから、すごく真剣に。「それでもやりたいんだったら考えるけど」みたいに諭されて。駐車場の鎖みたいなのを弄りながらわたしは話を聞いていて。

西寺:(笑)。

土岐:そのチェーンの絡んでる様子とかまで明確に覚えてるぐらい。

西寺:へえー、2歳半で。すごい!(笑)

土岐:それでもやりたい!って言って習わせてもらって。で、一番最初の発表会が、幼稚園の年長さんのときだったかな。念願のチュチュを着れたんですけど、鳥のカッコーの役で、茶色だったんですよ(笑)。

西寺:はっはっは!

土岐:ピンクが良かったのに茶色!?と思って。頭に付けるフサフサみたいなのも茶色で、すごいショックだったのを覚えてるんですよね(笑)。お母さんが言ってたのはこういうことか!みたいな。

西寺:でも年長さんということは、カッコーの役もらうまでに3年か4年やってるんでしょ、スタート地点のお母さんの言葉を覚えてるのがすごい。で、小学校もずっと続けて?

土岐:続けてて、小学校のときは近くのバレエ教室に毎週土日に通って。で、途中ですごくハードになって、東中野にある別の教室にもレッスンに通うことになったから、週に4日とか5日とか通ってたときがあったんですよ。そのときが一番忙しくてハードで、その生活を半年くらい続けてたら、子供ながらに体を壊したんですね(笑)。

西寺:過労!

土岐:過労で熱とか出ちゃって大変で。朝起きるのもしんどいみたいになっちゃったので、ちょっと減らして、週2回のペースを中学でも続けて。中1からはダンス部にも入ってたんですよ。

西寺:ダンスも!? めちゃくちゃ踊るやん。

土岐:(笑)。で、部活とかバンドとかも忙しくなってきて、クラシックバレエの方は高1か高2で辞めたんですよね。

西寺:でもさ、バレエで良しとされてるルールがダンスではやっちゃダメとか、逆もありそう。矛盾しないん?

土岐:ありました、ありました。基本はクラシックバレエの型みたいな道筋を通ってはいるんですけど、ダンス部の方はたとえば裸足で踊る曲とかもあるんですよね、創作ダンスだったので。そうすると、ちょっと重心を低くとるというか、床を踏み鳴らすような動きもあったりとかして。

西寺:バレエは基本背筋がシュッとしてるもんね。

土岐:そう。横隔膜のあたりを上にキュッとして、上から糸が出てるようにっていう動きなんですけど。だから最初は、重心低めで這いずり回るような動きとか、床をドンドンしたりがすごく苦手でした。「え、こんなことやっていいの?」みたいな感じで(笑)。

西寺:でも面白かった?

土岐:うん。運動部として走り込んだりするので、そういう厳しさに初めて出会って、それはそれで面白かったです。

西寺:球技とかはやらなかったんだ。

土岐:バレーボールとかバスケとかはやったことなくて。一回テニス部は見学に行ったんですけど、「ラケットの上でボールをポンポン30回やって」って言われて、一回もできなかった(笑)。球技のセンスが全然なくて。

西寺:やっぱり、音楽に合わせて踊るのが好きだったんだ。

土岐:そうですね。当時はヒップホップダンスとかの存在を知らなかったので。今はK-POPとか好きですけど、主に何が好きって、歌も好きですけど彼らのパフォーマンスが好きなんですよねえ。わたしの辞書にはない動き、たとえばアイソレーションっていう、体の一部分だけ動かす、胸だけ動かすとか首だけ動かすとか、よく吉田美和さんがやってますけど。

西寺:ああ、首を横に動かすケロヨンみたいな動き。やるね! 小松(シゲル)もめっちゃ得意やねん、あれ(笑)。

土岐:(笑)。そういう動きを基礎として、彼ら彼女たちは踊っているので。観ていてもどういうふうに踊っているかがさっぱり想像付かなくて面白いんですよね。

西寺:あとK-POPのアーティストは、Tシャツとジーパンみたいなラフなときもあるけど、基本的にはメイクしてバッチリやるじゃないですか。そういう派手なエンターティナー感も好きなんだろうね。この10年くらいですか、K-POPにバーンとハマったのは。

土岐:いえいえ、とんでもない。2019年からです。

西寺:え(笑)、だとしたらハマってからの速度が早くない?(笑)

土岐:そうなんですよ(笑)。2019年の春先にBLACKPINKのダンス動画を観てハマって、そこからわりとすぐにK-POPの連載を始めることができて。

西寺:ああ、じゃあコロナの1年前くらいですね。

土岐:そうですそうです。で、夏くらいにMONSTA Xにハマって、ファンクラブに即入ってファンクラブイベントに行って。で、韓国旅行とかも行ったりして。

西寺:早い(笑)。

土岐:そうなんですよ。だから、K-POPの連載とか音声配信番組とかやらせてもらってますけど、基本は教えてもらうっていう立場なんですよ。生徒役というか。

西寺:今日は土岐さんが好きな音楽を僕に紹介してくれると聞いてて。

土岐:あ、はい。

西寺:まずはこのCosmic Boy。

土岐:はい。Cosmic Boyをどういう経緯で知ったのかっていうのは、ちょっとよく憶えてないんですけど。多分、アイドルからの流れだったと思うんですよね。MONSTA Xを好きになって、彼らって自分たちで作品を作ったりもしているんですね。

西寺:曲作ったり?

土岐:もちろん他の人が作ったりもするんですけど、音楽プロデューサーと組んで自分で作ったりもしていて。で、その組む人がHIP-HOPの人だったりとか、アイドルの曲をメインで作っている人とは違って、日本でいうちょっとサブカルじゃないですけど、どメインストリームじゃない人の場合もあってですね。そういう流れでたどり着いたのが、Cosmic Boy。

西寺:お勧めから聴かせてもらいましたけど、めちゃくちゃ良いじゃないですか。これ、誰かをフィーチャリングしてるんですか。

土岐:そう。Cosmic Boyは音楽プロデューサーなんですって。これはyouraさんっていう人が歌ってて、もう一人Meegoさんっていう男性ボーカルも2番から出てくるんですけど、そのMeegoさんも大好きで。ちょっとジャズシンガーっぽさもある人なんですけど、その人がこのCosmic Boyさんと一緒にやっているっていうのでここまで辿り着いたかもしれないですね。

西寺:へえー。

土岐:Meegoさんを知ったのは、MONSTA Xからの流れでサブスクとかで見ているうちに。声が良い人をすごくフィーチャーしていて、もちろんサウンドもカッコいいんですけど、ボーカリストを選ぶセンスみたいなものもすごく良くてですね。この曲が入っているのはアルバムなんですけど、全曲良いんですよ。

西寺:これはヤバイな、感動的。

土岐:良いですよね!

西寺:ちょっと昔のカーディガンズとか、90’sの北欧の。「Carnival」の入ってるアルバムの2曲目「Gordon’s Gardenparty」だったりとか。スウェーデン発のレトロな、グロッケンとかビブラホーンとかの響きがあるドリーミーな感じっていうのは、90年代の音楽にもあったなっていう気はします。ドージャ・キャットとSZAの「Kiss Me More」にも同じようなこと感じたけど、カッコいい! これ、Cosmic Boyって検索すれば出てくる?

土岐:はい。これは『Can I Love ?』っていうアルバムの2曲目かな。で、他の曲もラッパーをフィーチャリングした曲もあるんですけど、OLNLくんっていう低くて太ーい声のラップをする人がいて、その彼と組んだ曲も全部よくて。どうやら、あとから知ったんですけど、GIRIBOYさんっていう方が中心となったクルーがいるんですよ。その中にCosmic BoyとかOLNLがいるらしくて。こないだ、OKAMOTO’Sのレイジくんがこの辺詳しいかなと思ってLINEで聞いたら、「え、知らないです」みたいな感じだったんだけど、詳細を送ったら「あ!一緒に遊んだことあるわ」って(笑)。

西寺:名前というより普通に友達だったという(笑)。

土岐:友達の友達の友達みたいな感じで、たまたま東京に来てるのがわかったのでインスタグラムのDMして、彼の音楽とかそこまで知らずに、とりあえずクラブ行って一緒にDJやったりしたって言ってました。

西寺:流石(笑)。やっぱりこれもいわゆる「チルい」ってやつなのかな、ゆったり聴ける。

土岐:作品自体は2019年とかなので、ちょっとチルいものとかドリーミーなものが流行ったときですよね。

西寺:あー、これは2年ちょっと前なんだね。今はまたちょっと違うのかな。

土岐:Cosmic Boyさんの最新のやつは、去年の秋に出てるんですけど、それも良かったですよ。「Love in summer」っていう。

西寺:ぜひ皆さんも聴いてもらえると。で、土岐さんはLambCさんともDMで繋がって一緒に曲を作って。

土岐:そうそう。国としては近いから親近感もありつつ、全然違う音楽の影響の受け方を小さい頃からきっとしているわけで。だから最初すごく新鮮に感じて。最初に「Absence ‘Side C’」っていう3曲入りのシングルを聴いて、1曲目の「Lady」っていう曲をまず気に入って、他の作品もいろいろ聴いてみたんですけど。なんかね、LambCさんは出す作品ごとに作風がいろいろとあって幅が広いんですよね。すごくロックっぽい曲もあるし、スティービー・ワンダーみたいな曲もあったりとか。この「Lady」って曲はR&Bのゆったりした感じなんですけど。

西寺:カッコいいなー。こんな歌い方してみたい(笑)。

土岐:いいですね。郷太さんとすごく合いそう。

西寺:やっぱこのLambCさんは、ちょっとソウル的なところが親近感を感じる。

土岐:そうなんですよ。多分、ルーツの辿り方みたいなのは全然違うと思うんですけど、英語の曲が多くて。バークリーで音楽やエンジニアリングを勉強して、全部自分でやっているソロユニットみたいな人らしいんですよね。

西寺:僕ね、J.Y. Parkさんも年齢2歳上なんですけど、いわゆるMTV世代というか。感覚が似てるんですよね。子供の頃に影響受けたデュラン・デュランとか、それこそマイケル、プリンス、ワム!とか、韓国の人って日本人以上に80年代のビルボードヒットみたいなものを……日本ってちょっと独特のロック雑誌文化があったり、もうちょっと音楽ファンが物語とかストーリーに寄ってる歴史があったというか。レッド・ツェッペリンだったりローリング・ストーンズからオアシスとか、多分ギター持って自分の怒りやストレスを正直に歌うロックンロールバンド、シンガーソングライターが中心に評価されてきたと思うですよ。ラップもある意味「リリック」が生まれた背景を紐解く深さ、意味では同じで。

土岐:うん。

西寺:でもJ.Y. Parkさんもそうですけど、曲自体のグルーヴが気持ちよければいいじゃん、楽しければ! アメリカやイギリスから幼少期に浴びた音楽を自分なりに消化して再構築するみたいな、僕自身、そういう意味ですごく孤立してたんですけど、韓国の音楽プロデューサーの好きな音楽がデュラン・デュラン、ワム!とか知ると、なんか普通に友達になれそうだし話したいなー、「発想はこっちに近いな、俺」って思いますね。

土岐:たしかに、今回LambCさんと一緒に曲のやりとりをしてたときに、サビにハーモニーを付けてほしいっていう話をしたら、すぐに返してくださったんですけど、一番目のサビ、2番目、3番目でそれぞれラインが違うんですよ。それは、計算してのことなのか何なのか、細かく違うから。

西寺:バークリー行ってるし、計算してるんかな?

土岐:とも思ったんですけど、聴き比べてたら多分……。

西寺:フィーリング?

土岐:そう、フィーリング(笑)。フィーリングだなこれは、と思って。好きなの選んでいいよーみたいな、そういう良い意味でのアバウトさが音楽的だなと思いました。

西寺:このCosmic BoyもLambCも最高。で、土岐さんのことを好きで、「こういうシティポップを聴きながら東京の街を歩いてみたい」と言っていた方がいたという。

土岐:その方がチョン・セウンさんといって、2017年頃かな、わたしが自分の名前でTwitterを検索してたときに、チョン・セウンさんのインタビューの抜粋みたいなのが引っかかって。「ああ、韓国の若者がわたしの音楽を聴いてくれてるなんて嬉しいな」と思って。でもそのときはまだ――

西寺:K-POPにハマってない。

土岐:そう、ハマってなかったから、遠い気持ちで「ありがとーう」と胸にしまっていたんですけれども、それから2019年にMONSTA Xにズブズブとハマって色んなことを調べていくうちに、このチョン・セウンさんが出てきたんですよ。MONSTA Xメンバーとチョン・セウンさんが仲良しだと。

西寺:びっくりする!(笑)

土岐:なんでだろう?と思ったら、同じ事務所だったんですよ。「久しぶりー!」みたいな(笑)。

西寺:「わたしのことを言うてた、あのときの!」(笑)。

土岐:そうだったの!?と思って、直近でリリースしたものを聴いたら、前も良いと思ったんですけど、より進化してアップデートされて、今の音っぽくなっていて。一番最近出したアルバムの音がめちゃくちゃ良くてですね、逆に「ファンです」って言えるくらいに(笑)。

西寺:今度はこっちが「チョン・セウン聴きながらソウルの街を歩きたい」って(笑)。

土岐:(笑)。で、元々はPRODUCE 101 season2っていうサバイバル番組出身なんです。

西寺:資料を見ると、その時はギリギリで落ちたらしいね?

土岐:12位という順位で、11人のデビュー組からは外れちゃったんですよね。

西寺:でもLambCさんと比べると、だいぶメジャー感がありますよね。

土岐:ポップスですよね。

西寺:ね。こっちの方が一般的に売れてる音楽のフォーマットっていう感じがしますね。チャートに乗りそうな。

土岐:うんうん。STARSHIPっていう事務所が、元々HIP-HOP系のアーティストがいるような事務所で、MONSTA Xもアイドルグループですけど、HIP-HOPアイドルみたいな感じで最初はデビューしたんですよ。メンバーの中にラップバトルに出てる人もいたりして。そんな中で彼はポップスシンガーとして所属しているという。

西寺:可愛らしい人ですね。アイドルじゃないですか、普通に。

土岐:そうなんですよ。だから2017年頃に出した曲はもっと、いわゆるパステルカラーっぽい感じのポップスだったんですよね。

西寺:だってチョン・セウンでネットで調べたら次に「かわいい」って出てくるもん(笑)。

土岐:日本でもファンの人多いと思いますね。

西寺:めちゃくちゃ若くないですか?

土岐:わたしが最初に知ったときは10代とかだったんじゃないですかね? 高校生みたいな子がわたしのこと聴いてくれてるっていう印象だったので。

西寺:97年生まれですね。Cymbalsがインディーズ・デビューした年で、僕もメジャー・デビューした年(笑)。

土岐:怖いですね(笑)。どんどんアップデートされて進化しているのが、作品ごとにわかるので、これからどんな音楽を作ってくれるのかなっていうのが楽しみです。

西寺:これ、今まで話を聞いてきたような音楽もK-POPって言うんですかね?

土岐:韓国のポップスなんでK-POPで良いんじゃないでしょうか。

西寺:韓国語にしろ英語にしろスッと入ってくるから気持ち良いですよね。僕らにとって母国である日本語にはない、脳みその別の部分を使わなくていい感じがある。そういう気持ちよさってありますよね。

土岐:でも郷太さんって日本語でも英語的な作詞をするじゃないですか。

西寺:響きがね。

土岐:日本語ってその一文字一文字、必ず母音で終わるけど、英語って子音で終わったりもするじゃないですか。「T」とかがあるとそこでクッと止まって、そこでリズム作れたりする。

西寺:はいはい。土岐さんのボーカルのそういうところもめちゃくちゃ好きで。

土岐:ありがとうございます。韓国語もそれに近くて、子音で終わる言葉がすごく多いんですよね。だからそこが日本語と遠くて英語と近いので、わたしが韓国語のラップやポップスが好きなのは、その言語の響きがすごくあると思います。

西寺:元々はアメリカとかイギリスから入ってきた音楽を好きだから、それをどう日本語に変換していくか?っていう、色んな人が旅というかトライ&エラーを繰り返して、そこでそれぞれの発明があって。もちろん韓国でもそれがあったと思うんですけど。……僕は「紫色の歌が好きだ」ってよく言うんですよ。

土岐:はいはい。

西寺:20何年前から言っていて。楽しいのか悲しいのかわかんない、赤と青が混ざったような、速くもなく遅くもない。言い方を変えれば『Twilight』と似てると思うんだけど、太陽が海に沈んで一瞬空が紫になる瞬間みたいな、そういう音楽が好きだって俺は言っていて。もちろん、自分は色んな種類の曲を作るし、バカみたいなパーティー・ソングもいっぱいあってそれも良いんですけど。でもさっき言っていた、言葉を理解する音楽と、言葉が理解できない音楽だと、理解できた方が良いっていうのが強い時代も長かったと思うんですよね。

土岐:日本でね。

西寺:特に90年代の終わりから2000年代とか。だけど最近K-POPが流行ったことによって、若い子たち、僕らの息子とか娘たちの世代は、どんな言語の音楽でも楽しいじゃんっていう。たとえばBTSの「Butter」でもそうですけど、日本語で、言葉の意味が理解できないと音楽を楽しめない時代が、K-POPのおかげで終わったような気がして。

土岐:ああー。

西寺:ある時から10年、15年洋楽離れなんて言い方をされて。僕はやっぱり言葉でしか音楽を楽しめない風潮を「残念だな」と思ってましたけど。K-POPが子供達の音楽の楽しみ方をすっごく広げてくれているなって思って。そういう意味ではどうですか、韓国語で歌うアルバムと英語で歌うアルバム、日本語のものもあるじゃないですか、どれが好きですか。

土岐:わたしはやっぱり韓国語で歌ってるのが一番好きですね。英語も良いと思うんですけど、日本語は曲によるっていうか。一番難しいよねってすごく思いますね。訳詞って、意味を訳すのか音に合わせるのか。

西寺:そうなんだよね。だから僕は……ジャスティン・ビーバーの「What Do You Mean?」っていう曲があるんだけど、「What Do You Mean?♩」を「ど、ゆ、意味ーん?♩」って変えたりする。「どういう意味?」って。メロディにハマるし意味も同じ(笑)。

土岐:ははは! たしかに!(爆笑)

西寺:そういうのをめっちゃやりたいのよ、俺。音はほぼ一緒で、日本語と英語で意味もほぼ変わらんっていうことをやりたい。

土岐:すごくしっくりきますね、それ。音を損なってないですもんね。

西寺:「Do you in me」みたいに聴こえるしね(笑)。……最後の話題なんですけど。土岐さん、V6の作詞もされてますよね。

土岐:最近ね。

西寺:僕は2010年代のはじめから半ばくらいまで曲を作らせてもらっていて。で、土岐さんは「MAGIC CARPET RIDE」と「PINEAPPLE」か。「PINEAPPLE」はシングルですし、どちらも需要なV6後期のキーとなる歌詞を書かれてる。作詞家として、ダンスミュージックとの向き合い方みたいなものも、最後に聞きたいんですけど。V6の最後のライブに行かれたんですね?

土岐:行きました。感動しました。本当に。ジャニーズのコンサートって、わたし行ったことがなくて初めてだったんですけど。いわゆるV6のイメージを堪能できるメドレーもありましたし、V6って本当に色んな曲を果敢に挑戦するから――

西寺:ね、ずーっと前進しながら終わったというか。

土岐:そうそうそう。だからそういう新しい側面を見られる曲も多くてですね、「あ、こういう曲もあったんだ」みたいな。V6ってこういう色ですっていうのを一言で言えないような、色んなことに挑戦して常に更新していける人たちというか、アップデートしてますっていう姿をひとつのライブで感じることができて。カッコいい人たちだよな、やっぱり、と思って。

西寺:ちゃんと「解散します」って言ってタイムスケジュール作って、最後までみんなで協力してね。「終わりだからいいじゃん」で手を抜く人が誰もいない。森田剛さんが責任監修した「雨」っていう曲もすっごいカッコよかったしね。

土岐:そう、(ライブが)「雨」始まりだったんですよ。

西寺:僕は初めてジャニーズのライブを観たのはSMAPで。曲書いたときに呼んでもらって。でもやっぱりジャニーズのライブってなかなか行けないですよね?

土岐:行けない。チケットも取れないし。

西寺:僕はV6の最後のライブは行けなかったですけど。良いチャンスでしたね、それは。

土岐:そうですね。「PINEAPPLE」の歌詞を書いたときには、すごく難しいなと思って。これまでやったことのないようなタイプの作詞だったんですよ。すごくアメリカンな曲で、日本語のために書かれたメロディではない前提でできてる曲なので。ラップのパートがあったりとか、グループで歌うっていうことで一人一人の……なんというか、構成的に流れていく感じじゃなくて、シーンがパッパッパッと変わっていくような、起承転結でいうと「起→転→転→転…」みたいな曲だったりするのも初めての経験で。でもすっごく楽しかった。なぜなら、K-POPをずっと聴いていて、MONSTA Xとかも彼ら7人の持ち味がそれぞれ違うわけですね。

西寺:だよね。

土岐:歌のいいところ、声の得意なところとか違うからその見せ場を、パートごとによって雰囲気はガラッと変わるんだけども、端的に見せていく作り方なので。「PINEAPPLE」ではまさにそれを自分でできるっていうので、難しかったけど興奮もしまして。で、郷太さんのときは、最初から「このパートは誰が歌う」とか聞かされてたりしました?

西寺:いや、僕の場合は自分で歌割りを決めさせてもらえたので。

土岐:え! そうなんですか?

西寺:特に「Sexy.Honey.Bunny!」に関して言えばスタジオでボーカル・ディレクションも僕がやらせてもらえたので。まあ実質的なプロデュースは井ノ原くんと三宅くんだったので、歌に関しては僕が中心になって、演奏に関してはcorin.さんっていうそのときのパートナーが担当して。

土岐:なるほど。わたしの場合は決まっていなかったので、きっとここは三宅さんだろう、きっとここはイノッチだろうとか思いながら(笑)、自分なりの勝手なイメージで想像しながら作って。

西寺:どうだったんですか、それで結果は。

土岐:結果はね、結構合ってたんですよ! イメージ通りにハマっているところもあったし、意外なところもありましたけど、それはそれで面白かったですよね。

西寺:あ、SMAPとかKAT-TUNに書いたときはそうだったなぁ。その時は預けて返ってくるスタイルだったから。「あ、ここ中居さんなんだ」とか、初めて聴いた時衝撃だったし嬉しかったなー。どっちも面白いよね。作詞の妙というか、思った通りになるときもいいけど、意外性もあるから。あと、自分が関わった曲で踊ったりパフォーマンスが完成した後に観るのもカッコ良すぎて。

土岐:もぉーう、あれは感動しますよね。本当感動する。

西寺:俺たちバンド上がりは、ドラムがいてベース、ギターがいて、ボーカルがここにいて、みたいな固定した立ち位置で慣れてるから。だからああやって何人かでフォーメーションとかがあって、動きで曲が化けるのを観ちゃうと、感動しちゃうよね。

土岐:一気にそこでまた世界が広がるし、物語性ができますよね。「MAGIC CARPET RIDE」は、郷太さんにね、井ノ原さんを紹介してもらって。短い時間の中で的確なものを書きたかったので、お話を伺ったりして。そのときに聞いた話が、「解散だけれども、まだまだ踊るっていう姿を見せていたい」っていう。カッコいいなあと思って。だからあんまり解散ということを考えずに、本当に楽しめる曲にしようと。解散のニュースを観た時「ああ、もうV6とは仕事できないんだなぁ」「寂しいなあ」と思ってたんですよ。そしたらお話をもらったので。

西寺:でも本当、土岐さんの詞が良かったからまた頼まれたんだと思いますよ。

土岐:本当に嬉しいですねぇ。

西寺:ということでね、そろそろ時間なんですけど。今はなかなか飲み会とかもなくて、そんなに会えないから。今日はいろんな、バレエの話からK-POPのアーティストを教えてもらったり、V6の作詞やライブの話なんかもできて、非常に楽しかったです。

土岐:楽しかったです!

西寺:アルバム『Twilight』、本当に最高傑作だと思います。どんどんどんどん進化して、新しくなっている、1~5曲目。身体の中にリズムと言葉のひとつ一つが沁みてくる「2020年代」サウンド。で、6曲目の「Mirrors」あたりから「土岐麻子さんってこうあってほしいな」とか「こういう土岐さん好きだったな」っていう、今までのキャリアで築き上げた土岐麻子像みたいなものもちょっと加味した、ファンにとってはちょっと嬉しい世界観が混ざった音像になって。で、最後の「眠れぬ羊 (with TENDRE)」がまた本当に素晴らしい、タイムレスな曲。A面B面でカラーが違うから、いつかアナログになることを希望して(笑)。

土岐:そうですね、はい(笑)。

西寺:そして『Twilight』を携えたワンマンツアーが2022年1月からスタートすると。“Morning Twilight”。新しい朝の雰囲気というか。

土岐:年始なんでね!

西寺:ツアーもスタートということで、今回の『Twilight』もぜひ聴いてみてください! ありがとうございました。

テキスト構成=風間大洋

PAGETOP